堂本剛。
この言葉を聞いたあなたは何を連想するだろうか。アイドル、KinKi Kids、歌がうまい、面白い…彼の魅力を挙げればキリがない。それくらい堂本剛という男は多才である。
しかし、今回はその中でも堂本剛の役者としての魅力に迫ろうと思う。特に、脚本家・小松江里子作品との相性がよかった理由とともに掘り下げていきます。
小松江里子に評価された堂本剛の演技力
小松江里子脚本の堂本剛出演ドラマ
・セカンド・チャンス
・若葉のころ
・青の時代
・to Heart 〜恋して死にたい〜
・Summer Snow
・ガッコの先生
・元カレ※セカンド・チャンス以外は全て主演
以上が、小松江里子脚本の堂本剛出演ドラマである。脚本家が気に入った役者さんを何度も起用するというのは珍しくない話だが、特に堂本剛と小松江里子の関係は特別だ。
堂本剛が主演を務めた「若葉のころ」、「青の時代」、「Summer Snow」は「青春三部作」と名付けられている。「若葉のころ」を制作した時点で青春三部作を作ることは既に決定していた。しかし、主演を全て堂本剛が演じる予定はなかった。
だが、堂本剛が大場誠役として出演した「人間・失格〜たとえばぼくが死んだら」のプロデューサーで小松江里子の夫でもある伊藤一尋が剛の演技力を高く評価。小松江里子自身も伊藤一尋の意見に賛同したことから、青春三部作の全てを堂本剛が主演を務めることとなった。
伊藤一尋と小松江里子が堂本剛の演技力を評価しなければ、青春三部作で彼が全て主演を務めることは当然なかっただろう。アイドルが主演を務めることはよくある。だが、剛はプロデューサーや脚本家に気に入られた結果主演をゲットしたのだ。
このことから、剛がいかに演技力が高いかが分かる。ましてや、「セカンド・チャンス」に出演をした当時まだ16歳だったのだから尚更驚きだ。
堂本剛と小松江里子作品が相性いい理由
堂本剛が青春三部作で演じた役は、決して幸せな人生を送っている人物とは言えない。
例えば「若葉のころ」で演じた相沢武司は、幼くして母親を亡くし、まともに仕事もしない父親の代わりに学業とバイトを両立しながら弟や妹の面倒を見ている苦労人だ。「青の時代」で演じた安積リュウは、風吹ジュン演じる満江に見捨てられた不良少年。リュウが事件に巻き込まれた時に自分を弁護してくれた弁護士・榛名圭一(上川隆也)のおかげで更生するも、二重人格だった榛名と対立する関係に。
青春三部作のラストを飾った「Summer Snow」は「若葉のころ」や「青の時代」に比べると明るい作品だったが、剛が演じた篠田夏生は最終回で事故に遭い亡くなってしまう(厳密には脳死)。もっとも、1話が始まった段階で夏生の両親は既に他界しており、耳の不自由な弟・純(小栗旬)と妹・知佳(池脇千鶴)の親代わりという設定だったので、やはり苦労人だった。
このように、青春三部作で堂本剛が演じた役は影のある役ばかりだ。アイドルが演じるには重すぎると言っても過言ではない。いくら演技力が評価されていたとはいえ、アイドルにこのような役を演じさせるのは一般的に見たらレアケースであろう。
しかし、堂本剛はこれらの役を全く違和感なく見事に演じ切った。何故なら、堂本剛自身が影のある雰囲気を醸し出しているからである。故に、相沢武司や安積リュウのような切ない役が似合ってしまうのだ。
ちなみに、これは演技だけでなく歌も同様だ。KinKi Kidsの代表曲「ボクの背中には羽根がある」を作曲した織田哲郎氏はこの楽曲がフォルクローレ調のアレンジでいけたのは、”KinKiの持つ華やかさと哀愁感が許してくれたから”と自身のカバーアルバム「MELODIES」のブックレットの中で語っていた。こうした彼独特の魅力が役者としての味にも繋がったのだろう。
このような理由から、小松江里子と堂本剛の相性は抜群であると言える。小松江里子の描く切ない世界観は、堂本剛の魅力を見事に引き出しているのだ。
「Summer Snow」で役者として大きく成長
「若葉のころ」や「青の時代」は非常にシリアスな作品である。笑える要素はほとんどない。「Summer Snow」もシリアスなシーンが多い作品ではあるが、「若葉のころ」や「青の時代」に比べるとコミカル寄りの作品となっており、青春三部作ラストにして若干の変化球を感じた。
何より、剛が演じた篠田夏生がかなり陽気なキャラだった。特に、純や知佳とのやり取りは漫才を観ているかのようだ。お笑い好きでも有名な剛だが、相沢武司や安積リュウを演じたのと同一人物だなんて信じられないくらい夏生のキャラには衝撃を受けた記憶がある。
実際、小松江里子自身「Summer Snow」での堂本剛の演技は予想以上だったと「Summer Snow」ノベライズ本でも語っている。こうして、「Summer Snow」の篠田夏生役は役者・堂本剛の新たな魅力を引き出した。「Summer Snow」の約1年後に放送された「ガッコの先生」の桜木仙太郎役は完全に三枚目キャラだったので、夏生役は役者・堂本剛の更なる成長の足掛かりとなったであろう。
堂本剛の役者としての才能は、小松江里子以外も評価している。「33分探偵」のプロデュースを担当した鹿内植は、”堂本剛さんのあのズバ抜けたバランス感覚、演技力、そして何かつかみどころのない魅力が今回の“33分探偵”というキャラクターを最大限に魅力的なものにしてくれる”と彼の演技力を評価していた。
「33分探偵」は個人的にも大好きな作品だ。今思えば、「33分探偵」でぶっ飛んだ役を演じられたのも「Summer Snow」の篠田夏生役があったからこそなのかもしれない。
堂本剛は元々子役として活動していた。故に、伊藤一尋と出会った「人間・失格〜たとえばぼくが死んだら」」や小松江里子との初タッグ「セカンド・チャンス」が彼のデビュー作というわけではない。しかし、青春三部作をはじめとした小松江里子とタッグを組んだ作品たちは役者・堂本剛を象徴するものと言ってもいいのではないだろうか。
個人的には、堂本剛と小松江里子に再タッグをして欲しい。もちろん、実現するかは本人たちの気持ち次第だ。ただ、もしこの黄金タッグが再び実現すれば、役者・堂本剛はさらに成長するはずだし、改めて役者としての才能も評価されるに違いない。